beach storyのお話 story.36 ギリギリで

beach storyのお話 story.36


ワクワクしながら店舗の中を

見させてもらった。とりあえず

この物件は俺が押さえちゃって

るからゆっくりじっくり見れる!


インドカレー屋さんだったわり

には中がずいぶんと昭和感が溢

れる和風だな。

聞いてみたところそのさらに前の

人が焼き鳥屋さんを経営していた

そうだ。それで前任のインド人は

内装は何もせずその和風のままで

インドカレー屋さんを経営してい

たらしい。


内装を全く変えずにやるなんて

またいい度胸してんな💦


ここから南国っぽい感じに

変えるのはなかなか大変そ

うだよ……


ってか、マジでカレーくせー


前任のインド人なんなんだ💢

調味料くらい片付けてけよ...


まぁ、それはさておき

店内の広さは7,5坪の

2階建だから計15坪。

広さも場所も始めるには

ちょうどいい!

もう迷わずここに決めよう!


さぁ次の難関が迫ってきた。

今度はお金の問題だ。

これまでに店の出し方的な本を

読んだり、聞いた話だと、

最低600万~1000ないと

出来ないとか。


俺の手持ち100万円


家賃と保証金の他に居抜き

物件の造作譲渡金が必要だった。

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居抜き物件

 前の人が試用していたままの状態で

 多少の設備は整っている状態。


造作譲渡

 大半は借り主がスケルトンで

 返す費用を押さえるため、主に

 場所の権利として権利を前借り

 主から買い取る事。

 残っているものを使う使わないは

 借りた人の自由。

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内装を和風から久米島で

感じたような南国の手作り感を

出したいから、手作り感という

より、自分で本当に手作りで

やっちまおう。

自分でペンキで色を塗り替えて、

木材はホームセンターで買って

きてここで切って貼付けたり出

来そうなものは全部自分でやっ

ちまえばだいぶ費用を抑えられる。


9年前に拾い集めた貝殻なんかを

ようやく部屋から出せる時が来た。

造作譲渡金も含めたらそれでも数

百万は足りないな。

あとはどうにか借金をかまして補う。

そして、手持ち100万まで貯めれば

店は始められるって事を証明して

やろうじゃねーか。

そうすれば、これまで読んだ本を

覆せるし型破りのやり方も見つか

るだろ。


さっそく国民制作金融公庫へ

お金を借りに行ってみる。

当然その場では貸してもらえない。

申し込み用紙の他に色んな案内の

パンフレットの他に事業計画用紙を

1枚渡され


こちらに事業計画書を

 記入してください。

との事。


埋める内容はほぼ数字ばっかで

コンセプトの部分なんて一言く

らいしか記入スペースがない

これだけじゃこっちの熱意なんか

まず伝わない。

こんなの無理なんて判断されたら

まず貸してくれないだろう


それなら、

別紙でこっちで完璧なもの

作って、いっさいの質問もこ

ないようなこれ見れば誰だっ

て店を作れるって内容にしちゃ

えば相手は俺に貸す気になるはず。

ようは借金をちゃんと返せるって

内容になっていればいい訳だよな。


早速事業計画書の作成にとりかかる。

幸いな事にこの物件も俺の借り入れが

確定するまでは、大家さんも待ってく

れる約束もしてくれた。


国民制作金融公庫の流れはこうだ。


1 まずお金を借りる為の

  申し込み用紙をもらう。

2 必要事項を記入し、事業計画を作り

 もう一度出向いてそれらを提出し、

 後の面談日を決める。

担当の方と面談をし、2週間ほどで

 結果が伝えられる。


大きく分けてこの3段階。

めんどくさいだけに金利は

国民制作金融公庫が一番低

いんだ。だから借金して事

業を始める人達は大半が

ここを利用する。


ここで失敗は許されないから

頼れる人には頼るべき。

中小企業診断士の方や

ここを借りた経験のある人から

営業ひとすじでやってきた

俺の父ちゃんまで見てもらい

こう書いた方が伝わりやすい」や

「この部分は余計だから書かない方が

 いい」など指導してもらいながら

納得でしてもらえるように

作成し、完成した。


よっしゃ!この内容だったら

 のび太でもきちんと理解が出来て

 ドラえもんの道具も要らずに

 必ず成功出来る内容だ!


あとは俺の熱意で相手を圧倒出来れば

必ず決まるだろう!

今の波ならこのまま乗り続けられる

自信があった。

予定通り面談を行い、とことん熱い

トークを語りまくったんで結果を

待つだけ。


短くも長い2週間が過ぎたお昼過ぎ頃

国民制作金融公庫の担当の方から俺の

携帯電話に連絡がきた。


「もしもし、yoshiさんですね。計画書の

 内容や面談の結果、融資が通りましたんで

 二日後にはお振り込みますね!」


あの夢を描いて9年。

20代ギリギリで独立決定!


30歳を目前にプータローのまま

結婚し、結婚式の準備と平行に

店の立ち上げ準備が始まる。

これまでに経験したこのない、

過酷な忙しさが襲ってくるが

今のテンションならマジで

恐いものが何もない。


全てがギリギリだったが

「20代で結婚」と

「20代で自分の店」を

同時に叶える事に成功した!

story.37に続く

前回のお話

世界の路上 バンコク カオサンロード